不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

暗殺のソロ/ジャック・ヒギンズ

暗殺のソロ (ハヤカワ文庫NV)

暗殺のソロ (ハヤカワ文庫NV)

 天才ピアニストだが、実は凄腕の殺し屋《クレタン・ラヴァー》であるジョン・ミカリ。英軍パラシュート連隊の大佐で、ミカリが犯行現場から離脱する途中に誤って轢殺した娘の父親として《クレタン・ラヴァー》に復讐を誓うエイサ・モーガン。そして彼らに二股かける心理学者キャサリン・ライリー*1。この三名を中心に展開される、緊張感に溢れたドラマが見物。キャサリンが二股について爪の先ほども悩まないのがポイントか。物語のテンポは終始快調・快適であり、手の込んだことはほとんどしない代わりに、流れが滞ることも皆無。気軽に接することができるのは良いと思う。普通にお薦めです。
 なお、アンドレ・プレヴィンが登場してミカリにお茶を淹れたり共演したりします。しかも最後の対決はプロムスのラスト・ナイトに設定され、曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲第4番! 思わず燃えてしまった。音楽絡みの突込み所はけっこう多いが、あの特殊な演奏会をよくぞクライマックスに使ってくれました、という感じ。作品の評価には何の影響も及ぼさないが、個人的には印象に残る作品であった。

*1:さすがにミカリの正体は知らないままに、だが。