不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

雨の襲撃者/ジャック・ヒギンズ

雨の襲撃者 (ハヤカワ文庫NV)

雨の襲撃者 (ハヤカワ文庫NV)

 IRAの英雄ショーン・ロウガンは、IRAの大物・老オモアの手引きで、服役中の刑務所から脱獄する。オモアはロウガンに、組織のために列車強盗するから助力して欲しいと要請する。ロウガンはそんな悪辣な資金調達手段を好まなかったが、他でもないオモアの依頼だからと引き受けることにする。しかし、仲間として紹介された、粗暴な奴らは何かを企んでいる節があり、更に脱獄囚ロウガンをスコットランド・ヤードのヴァンブラ警視(でも先の大戦でロウガンに命を助けられている)が追う……! しかしそれらをよそに、計画の協力者の姪パディ・コステロウとロウガンは、20歳差の恋に落ちるのだった。
 アクション映画の娯楽作であれば絶対こう展開するだろう、という定石を終始堅持し、一切踏み外さない作品。舞台装置も背景もスケールが小さく、これがハリウッド映画だとすれば、多分比較的低予算で作れるだろう。ただし代わりに構成は堅牢であり、悪い意味でだれることはない。それを敢えて小説で読む、ということのえもいわれぬ楽しみと、しかし確かに恒常的にカタログに残しておくのは厳しいかも知れないというつまらなさ。全く頭を使わず、ちょちょいのちょいと読めるので、個人的には非常に好ましく感じた。