帽子屋の休暇/ピーター・ラヴゼイ
- 作者: ピーターラヴゼイ,Peter Lovesey,中村保男
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1998/10
- メディア: 文庫
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帽子屋が出て来ません。もっとも多分、ルイス・キャロルの例の《キチ○イ帽子屋》から採ったと思われるので、読了後、内容と題名の関連性をどう捉えるか頭を使うのも一興だろう。そしてその内容だが、やはりヴィクトリア朝の薫りが美点。ニール・スティーヴンスン『ダイヤモンド・エイジ』のような、正統的で栄光に満ちた時代としてのヴィクトリア朝ではなく、徳岡孝夫が『横浜・山手の出来事』で描き出した、華美だが欺瞞に溢れる時代。そんな陰の空気が、ここには確かに漂っている。モスクロップの言動が客観的に見て、普通に気色悪いという点もそれを助長する。
事件の真相は、それなりに綺麗にまとまっている。総合的には、佳品と呼んでも良いだろう。ラヴゼイ・ファンなら読まれてはいかが?