不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

出口のない部屋/岸田るり子

出口のない部屋 (ミステリ・フロンティア)

出口のない部屋 (ミステリ・フロンティア)

 二人の男と一人の女が、一部屋に閉じ込められた。……そんな章をよそに、他の章では、その三名の人間にかかわる人間関係がゆがみ、軋む様が描かれる。
 全編、実にイヤーな雰囲気に溢れており、登場人物の醜悪さがのべつまくなしに噴出している。非常に楽しく読んだ。三人が閉じ込められている章の処理が非常にしょぼいのは残念だったが、他の点についてはそれなりの完成度を誇るようにも思う。どういう層に薦めれば良いのか惑うけれど、イヤ話がお好きな向きは読まれてもよろしいのではないでしょうか。