不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

敵は海賊・海賊たちの憂鬱/神林長平

敵は海賊・猫たちの饗宴 (ハヤカワ文庫JA)

敵は海賊・猫たちの饗宴 (ハヤカワ文庫JA)

 太陽圏連合の次期首長候補・マーマデュークが、伝説の海賊ヨウメイと対決すべく、海賊たちの巣窟である火星都市・サベイジを訪れる。その護衛を命ぜられたのは、お馴染み一人と一匹と一艦。一方、ヨウメイはマーマデュークを陥れる工作を開始するが、どうも旗艦カーリー・ドゥルガーの様子がおかしい。そんな中、マーマデュークが致命傷を受けてしまい、その身体は冷凍され……たと思ったのも束の間、身体が病院から消えてしまうのだった。彼の妻マデリンと共に、ラテル・アプロ・ラジェンドラは捜査を開始する。
 《敵は海賊》シリーズは、作品中に色々なことが起きるが、本作も例外ではない。上記以外にも色々絡みます。そして最終的には、神林長平らしい展開を辿る。しかし楽しいスペオペという雰囲気を最後の一線でも守り通すのが、本シリーズの矜持なのだ。
 ところで本シリーズのあとがきは、登場人物が座談会(というかドリフ)する形式のものが多い。乙一の提唱する基準に照らせば、嫌われるあとがきということになるのだろうか。しかし私はこのあとがき、大好きなのだ。物事には何事にも例外というものがある。……しかし《敵は海賊》シリーズのあとがきは、あとがきというよりも作品であって同列に語るべきではないという気もする。登場人物の本編の性格がしっかり維持されているしなあ。