不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

太陽の汗/神林長平

太陽の汗 (ハヤカワ文庫JA)

太陽の汗 (ハヤカワ文庫JA)

 世界中に散らばったウィンカという情報収集機があるという設定のもと、ウィンカ全機に不具合が生じたの信号が出て来ない地域があるとして、主人公2人に原因究明のため踏み入らせる。そして2人の各々のパートが、言語による現実変容のためか、徐々に現実が乖離してゆく……。
 インカというある意味特殊な文明の遺跡近くで物語は展開されるため、非常に表現しがたい雰囲気に包まれる。この点が作品を特徴付けていると言って構わないだろう。SFというよりは幻想小説的な味わいが強い。完成度も低くないので、それなりにお薦めできる作品であろう。個人的にはあともうちょっと何か欲しかったが。ページを100ページ増やしたら、情緒・ネタ両面でもっと色々書き込めたのではないかという気がしないでもない。