不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

プリズム/神林長平

プリズム (ハヤカワ文庫JA)

プリズム (ハヤカワ文庫JA)

 上空3万メートルに浮かぶ制御体にコントロールされる都市、そして人類。制御体にお任せの非常に便利な生活がそこにあった。しかし制御体に認識されない少年がいて、彼は家族から愛されつつも疎まれている。そんな少年は、ある日、堕天使に出会う……。
 言霊の具現化みたいなことをおこなう連作短編集。お得意の機械知性のほか、異次元からの魔物的存在も絡み、ハードSFというよりも幻想小説のような味わいである。東京の実物大模型などの舞台設定、一度本当に死ぬ刑事・制御体に認識されない少年少女などの登場人物はなかなか面白いし、全体の雰囲気も良いのだが、意味がありそうな文章や情景の連続で、その意味をつかみあぐねてしまった。敬意を払うべき作品ではあろうが、個人的にはいまひとつ楽しめず、残念である。