不壊の槍は折られましたが、何か?

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敵は海賊・猫たちの饗宴/神林長平

敵は海賊・猫たちの饗宴 (ハヤカワ文庫JA)

敵は海賊・猫たちの饗宴 (ハヤカワ文庫JA)

 ヨウメイの首を狙う海賊の策謀により、皆ネコになってゆく……(ラジェンドラ含む)。という大騒動を描く作品。ついでに、ラテルとアプロが海賊課をクビにされており、喜劇的な要素は更に盛り上がるのであった。火星の軍人たちとなぜか野球するし。
 アプロが変な奴であることが、さらに強固に押し出される作品でもある。何かをずっと食っているとか、感情凍結能力とか前から示されていたが、何だか巻を追うごとに本気で化け猫のようになってゆくのが見物。戦闘能力高過ぎで素晴らしい。ラジェンドラも機械知性としていい味を出しており、ラテルは個性の強さといった点で、ちょっと押し負け気味。だがそこもまた良し。ヨウメイ側のパートは概ね真面目な基調で話が進行しており、物語に良いアクセントを付ける。
 神林が追求する、現実崩壊と言語遊戯を、読みやすいスペオペに強烈にぶち込んだ作品であり、たいへん面白い。バランス的にも前作を上回る。広くお薦めしたい。