敵は海賊・海賊版/神林長平
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1983/09
- メディア: 文庫
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そんな中、太陽系の海賊課には、一人と一匹と一艦のトリオがいた。刑事ラテルとアプロ、そしてフリゲート艦ラジェンドラ。ラテルは普通の人間だが、アプロは見た目が大きな黒猫の、太陽系外から来た異星人。そして、ラジェンドラは高度知能付きであり、海賊課随一と言っても良い戦闘能力を誇る。このトリオが主に対決するのは、伝説の海賊であるヨウメイ(ヨウの漢字が出ないのでカナ表記)とその部下ジュビリー、そしてヨウメイが誇る太陽系最強の戦闘空母カーリー・ドゥルガー(これまた高度知能付き)である。
以上の陣立てで、大騒動を巻き起こすのが本シリーズの基本形態だ。
『敵は海賊・海賊版』は、ジュビリーの故郷ランサス星系の王女が行方不明となり、女官シャルファフィン・シャルがヨウメイに助けを求めに来る。これだけなら普通のスペオペのようだが、平行世界が交錯し倒し、SFとして強い歯応えが出ている。時々SFを踏み越え、剣と魔法のファンタジー的な世界まで登場して、とにかく滅法楽しい。ただし本作において、ラテル・アプロ・ラジェンドラの個性はそれほど大爆発しない。キャラ立ちという面では、ヨウメイやジュビリー、そしてシャルファフィンの方が見事に造形されている。
先述の《剣と魔法のファンタジー》が、物語のバランスを若干壊しているようにも思うが、とても凝った舞台設定であることは間違いない。他の次元の自分と共同で何かやったりするシーンとか、非常に面白い。笑劇の要素があるので親しみを誘いやすいし、広くお薦めしたい一冊。