怪奇探偵小説名作選10 香山滋集 魔境原人/香山滋
怪奇探偵小説名作選〈10〉香山滋集―魔境原人 (ちくま文庫)
- 作者: 香山滋,日下三蔵
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/09
- メディア: 文庫
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以前読んだら香山滋はダメだった旨の記述を本ダイアリーに付けた気がする。しかしそれを謹んで撤回させていただきたい。本冊を読むことで、私と香山滋の歯車は遂に噛み合い、なるほどこれは一部で絶賛されていることもわかる、素晴らしい作家だと思った。
とにかく各短編、《んなアホな》という秘境ぶりが素晴らしい。空飛ぶ部族でさえまだ甘いわけで、しかもそれを、熱気溢れる人見十吉の行動と、超熱い恋愛劇が彩るのである。難しいことは考えてはならない。批判的な読み込みも断じて不可*1。ノリノリで読むのがもっとも好ましい読み方であろう。しかし、油断していると、とても美しい情緒が流れたりして侮れない。
ゴジラの根底にはこういった、熱いお馬鹿の血潮が流れていたのである。核兵器云々という御託を並べた日本版ゴジラよりも、アメリカ版ゴジラの方が香山滋の持ち味に近いかもしれないと思った。いずれにせよ物語としての質は、香山滋の圧勝に終わるわけだが。
*1:別に批判するなと言っているわけではなく、冷静に瑕疵を拾い上げて検証し、瑕疵の程度や数によって厳格に減点してゆくような読み方では楽しめない、と言っているに過ぎない。ご留意を。