炎の背景/天藤真
- 作者: 天藤真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/03
- メディア: 文庫
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おっぺとピンクルは双方、異性に関するトラウマがある。そんな彼らが一緒に逃げてゆく中、吊り橋効果で徐々に心を溶かしてゆく様が印象的。雪山を舞台に繰り広げられるサスペンスも強烈だし、事件の背後関係には社会派的味付けがなされているものの、原則的には若者二人の魂の浄化と救済の物語として理解できる。また一方、殺し屋サイドも、陰謀を企んでいる上層のお歴々も、血の通った人間としてしっかり描き込まれており、いわゆる《不気味な人間》が一人もいないのは天藤真ならでは。そしてだからこそ、人の世の無常が骨身に堪えるのである。
なお、作者にはシリーズ化の目算があったようだ。しかしそれは作者自身の死をもって見果てぬ夢となってしまった。とても残念である。