2006-04-29 われら殺人者/天藤真 小説 われら殺人者―天藤真推理小説全集〈14〉 (創元推理文庫)作者: 天藤真出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2001/03メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る 恐ろしいことに、一向にレベルが落ちない(その気配すらない)、天藤真の短編集。推理クイズ的に、出題編は普通に小説で、回答編はトリックを明かすだけで終了する「夜は三たび死の時の鐘を鳴らす」のみ、少々味気ない。しかし他は、サスペンスをベースに、趣向を凝らした作品が揃う。後味も(変な意味ではなく)良い/悪いを越えて残るものがある。「金瓶梅殺人事件」はオチが結構やり過ぎで笑いましたが、内実はかなり深刻。児童向け作品でさえ、事情は大して変わらないのだから、恐るべしである。 アイデアの鮮やかな閃き、スッパリと鋭利な断面を見せる人生模様といった要素は少ないが、温かく読者を包む人間ドラマ、そしてその温かさの中に、人間という存在のどうしようもない不気味さ・暗さ、そして歪みが潜んでいる。 最近は感想がずっとこんな調子で申し訳ないが、面白いから仕方がないではないか。まとめ読みしているためでもあろうけど。