殺しへの招待/天藤真
- 作者: 天藤真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1997/05
- メディア: 文庫
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再読。
五人の男に、差出人不明の殺人予告状が送られてくる。どうやら、ある女(差出人)が自分の夫を殺す予定で、その夫が宛先の五人の中に含まれているらしいが……。差出人にセッティングされた会合に出て来たのは四人の男。お互いに見知らぬ間柄だった。残る一人が鍵を握るのか?それとも?
影をふんだんに含んだシチュエーション・コメディ。天藤真の筆は、夫婦という関係性に皮肉に切り込む。登場人物への優しい視線は確固たるものがあるけれど、だからと言って作者は登場人物を決して甘やかさず、千尋の谷に突き落とす。物語の紆余曲折も、相変わらず本当によく考え抜かれており、トリックもなかなかに興味深い。最初から最後まで読者をまるで飽きさせない。これまた名作たるに相応しい作品である。
なお、若竹七海の本巻解説は本当に素晴らしい。天藤真の本質を射抜いているように思われる。『殺しへの招待』もそうだが、一見ユーモアタッチだが実は殺伐・荒涼・寂寞とした世界。さすがは同じく殺伐系の作家、同族の匂いを嗅ぎ付けたようだ。