不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

カエアンの聖衣/バリントン・J・ベイリー

カエアンの聖衣 (ハヤカワ文庫 SF 512)

カエアンの聖衣 (ハヤカワ文庫 SF 512)

 衣装文化をとんでもないレベルに引き上げたカエアン製の衣服は、対立しているジアードにおいても珍重され、闇では高額取引がおこなわれている。そんな中、カエアンの宇宙船がある無人惑星に墜落する。ジアードの密貿易業者の一団は、早速これを盗みに行くが、そこは音波砲をぶちかましてくる生物の巣であった。しかし何とかブツをゲット。ところが、その船荷には、カエアンにおいてさえ伝説である極上の逸品が含まれていた。この衣服には隠された力が……。
 服飾ホラーという側面もあるが、やはり基本的にはアホアホな発想力・想像力を楽しむべきバカSFである。単なる窃盗&故買の話が、あれよあれよという間に無闇に拡大される展開が実に素晴らしい。話の核心を為すネタに突き進む過程で、それと直接関係のないネタが各所で誘爆する様が見所。意味不明に陥ることはとりあえずないので、バカSF入門には好適の一作であるように思う。もちろん個人的にも大好きです。