青チョークの男/フレッド・ヴァルガス
- 作者: フレッドヴァルガス,Fred Vargas,田中千春
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/03/24
- メディア: 文庫
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同月刊行の藤岡真『白菊』と歩調を合わせたわけでもあるまいが、これも奇妙にして歪な作者のセンスをまずは愛でるべき作品。アダムスベルクは成熟した男性である一方で、五十代とは思えないほど純粋素朴な一面を併せ持ち(というか成熟振りは時々思い出したように提示されるに過ぎない)、カミーユという若い女性に想いを寄せるのであった。そして捜査方法は山勘に基づく。というか、某国内作家のシリーズで「嘘吐きの前に出るとクシャミが出る」奴のような感じで、裏があるのが(それが何かは判然としないが)わかってしまうという、特殊能力を持つ。
他の登場人物もヘンテコなのが揃っており、いきなり突拍子もないことを言ったり考えたりやったりするので、油断できない。
事件自体もなかなか面白い。本格本格したガチガチの推理を期待しても外されるだけだが、フランス・ミステリ、そして何よりもヴァルガス自身の変な世界を心行くまで堪能できる佳作。私は大好きです。『死者を起こせ』訳出から大分時間が空いたが、次は1年以内に出していただければありがたい。