不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

白菊/藤岡真

白菊 (創元推理文庫)

白菊 (創元推理文庫)

 画商の相良は、超能力者(でも実はインチキで、興信所に内密で探らせ、あとは自らの推理力で超能力があるかのように見せかけている)ということでテレビでレギュラー番組も持っているタレントでもあった。そんな彼のところに、一枚の絵の鑑定依頼が舞い込む。絵自体は大したことないのだが、そこで描かれている物自体は曰くつきかもしれない。一方、記憶をなくした女性の一人称で進むパートが挟まれて……。
 この作家は他に『ギブソン』しか読んでいないのだが、あちらに負けず劣らず変な小説であった。ギクシャクした展開を辿るストーリー、そして全てが綺麗に説明されるけれども、どこか歪な真相、結末。バカミスだと思う。そして、ここが一番重要なのだが、作者がふざけて書いている気配は微塵もない。この作家が持つ奇怪な感性を楽しむべき作品であると言えるだろう。個人的には大好きです。
 あとがきも同様に素晴らしい。ふざけている気は皆無なのだろうが、多分この人天然でバカミス王侯なのではないか。誉めてます。頭はいいと思うし。