新国立劇場
- マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》
- レオンカヴァッロ:歌劇《道化師》
- ガブリエーレ・シュナウト(サントゥッツァ)
- 山下牧子(ローラ)
- アルベルト・クピード(トゥリッドゥ)
- 小林由樹(アルフィオ)
- 三輪陽子(ルチア)
以上《カヴァレリア・ルスティカーナ》
以上《道化師》
- グリシャ・アサガロフ(演出)
- 新国立劇場合唱団
- 世田谷ジュニア合唱団
- 東京フィルハーモニー交響楽団
- ファビオ・ルイージ(指揮)
ヴェリズモ・オペラ二題。1950年代に時代を移していたが、特段変な解釈は見せず、痴情による惨劇を的確かつオーソドックスに描いていた。こうなると、ヴェルディ以前(=伝説や昔話、歴史上の逸話に材を求める)と比べ話事態が段違いに等身大となっているため、非常に骨身に応えるのも事実。特に、《道化師》の幕切れでトニオが見せるせせら笑い*1は見ていてキツかった。叶わぬ恋なら、皆死ねば良い。ルサンチマンのなせる闇の勝利、しかしそこには充実感などあるはずもなく、ただ虚しさがこみ上げるのみなのである。しかし私は、以下のように考えている自分に気付き、愕然とした。「何もしないよりは、この方がマシ。たとえこの上なく空疎であっても、勝利は勝利だ」……そっと忍び寄るルサンチマンの影を見事に映し出した歌劇であり、演出であったと思う。
音楽的には非常に充実していたと思う。歌手では中でも、クピードとフランツが貫禄であった。他も押並べて好演。指揮も評判どおりの素晴らしさ。場面場面でくっきり隈取を付けていて舌を巻く。もっと上質のオーケストラで聴きたいと思いました。