不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

炎のなかの絵/ジョン・コリア

炎のなかの絵 (異色作家短篇集)

炎のなかの絵 (異色作家短篇集)

 非常に粒よりの、素晴らしい奇談集。スマートで読みやすい物語につく、見事なオチあるいは馨しい残り香。ときに不気味、ときにユーモラス、そしてたまには哀愁を漂わせ……。変幻自在、自由闊達、洗練優雅。簡便な筆致も、相当文章を磨かないとこうはならない(でも労苦の跡は完全に消している)わけで、とても好印象。
 全短編が傑作なのだが、身を切る思いで一作だけ選ぶとすると、不思議な蚤小説「ギャヴィン・オリアリー」かな。
 自在の筆運びに乗せられ、読書の楽しみ(スッキリ系)を満喫できる、極上の一冊。現在8冊まで出た新装版異色作家短編集の中では個人的に一番好きだし、また広くお薦めしたい。