不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

空白の殺意/中町信

空白の殺意 (創元推理文庫)

空白の殺意 (創元推理文庫)

 高崎市内の私立高校に勤務する女性教師が、自宅で謎の死を遂げる。オシドリ夫婦で有名だった彼女がなぜ。彼女の妹は納得がいかなかった。しかしその死の二日前、同じ高校の女生徒が川土手で扼殺されていたのだった。そしてその地域では、甲子園出場を賭け、地元有力校同士の鍔迫り合い*1があった……。
 相変わらず感想が書きにくい。しかし今回も非常に良く考えられた、端正な本格にまとまっている。ネタのスケールは小ぶりだが、結構うまく決まっていて面白い。文章の文意が常に明晰なのも、読みやすくて好ましいのであった。本格ファンにはお薦めしたい逸品である。
 折原一の解説は《ネタバレはありません。安心してお読みください。》とあるが、スレスレの箇所があり、事前に読むのは避けた方が無難。そして非常に残念である。

*1:ただし球児同士ではなく、教師・父兄・地元関係者等の《大人》中心である辺りが、醜くて良い感じだ。