楽園の泉/アーサー・C・クラーク
- 作者: アーサー・C.クラーク,Arthur C. Clarke,山高昭
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 文庫
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しかし何にも増して、圧倒的に素晴らしいのは、物語世界の《背景》である。建設予定地にある巨大な寺院や遺跡は、千年前の伝説の暴君カーリダーサに起源を持ち、その叙事詩が雄大なリズムを刻む。また、十数年前に外宇宙から、人工知能つきの衛星が飛来し、銀河には他にも数多くの文明が栄え(中には、地球やその衛星を作った種族よりも遥かに進んだ文明もある!)ていることを伝えるのだった。
ここで建設される軌道エレベーターは、夢と希望と未知への架け橋である。しかしその《夢と希望と未知》は《ないかも知れないもの》ではない。宇宙に漕ぎ出せば、必ずや他星の素晴らしい文明に遭遇できるのだ。この壮大なヴィジョンこそ、単なる巨大建築物工事の話でしかあり得なかったはずの物語を、素晴らしいSFに転化させた最大の功労者なのである。
もちろん考証もなかなか緻密である。しかも読みやすい。傑作の一つとして、広くお薦めしたい作品だ。最近こればっかですな。