不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

東京交響楽団

  1. モーツァルト交響曲第29番イ長調K.201
  2. モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219
  3. モーツァルト交響曲第39番変ホ長調K.543
  4. (アンコール)モーツァルト:歌劇《皇帝ティートの慈悲》K.621序曲

 グリンゴルツのソロは、綺麗な音であることはわかったし、繊細に歌おうとする意図も好ましいものであったが、ハキハキした面が弱く、ちょっと乗れなかった。数箇所変な音を出していた箇所も散見され、初体験としてはあまり芳しいものではなかった印象。とはいえ面白いヴァイオリニストではあると思うので、違う作曲家でまた聴いてみたいと思う。
 交響曲第29番の方は、細部の表現も大切にしつつ、ぐいぐいとリズミカルに進むというもの。弦楽器主体の曲目であり、温かい木質の音色がとても良かったと思う。やはり私はこのオケが在京では一番好きだ。
 交響曲第39番も、基本的には同様の演奏であった。しかし曲の性質の差か、とても硬質な印象が強く、細やかに移ろうようなニュアンスの介在余地がない。やる気に満ちたサウンド、というのはわかるし、まあ若干の瑕疵はあれ、日本のオケとしては非常にしっかりと音を出していたが、個人的な嗜好には少々合わなかった。
 本日一番良かったのは、アンコールの序曲かも知れない。迫力十分の演奏で大満足。
 オケの隅々まで意思統一が図られているのが見て取れ(聴き取れ)、指揮者の能力に疑問はない。東響もよく要求に応えていた。これで不満を抱くのは、単に嗜好の問題と思われる。今後も要注目のコンビ。