不壊の槍は折られましたが、何か?

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果しなき流れの果に/小松左京

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

 下から上へ砂の流れる砂時計が、中世代の地層の中から見つかった……と喜んでいた、(ちょっと本流から離れた)教授二人が途端に死んだり脳溢血で倒れたりし、助手は失踪してしまうのであった。そして残された助手の恋人は(当然のことながら)時と共に老い、やがて死ぬのだった……。という、後から考えると矮小な発端から始まり、時空を超えた壮大な物語が展開される作品。
 純粋にSFとして、スケール極大の作品。このような設計図をひいても、個の人間性にテーマの中心を据える辺り、非常に興味深かった。これほど大規模な視座を提示しておいて、収束はそこに向かっておこないますか。SFに大法螺を求める人にも、「そうは言っても小説じゃないか」とヒューマニズムとやらを求める人にも、満足を与えてくれるだろう。小松左京入門には、実は適しているかも知れない一冊。傑作と呼ばれるのもむべなるかな。広くお薦めしたい。