フェアリイ・ランド/ポール・J・マコーリイ
- 作者: ポール・J.マコーリイ,Paul J. McAuley,嶋田洋一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/01
- メディア: 文庫
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ガチガチの構成や、鋭い人間描写・世相を見る視点があるわけではない。ただただ、近未来だが現代とはかなり異なる様相を呈する、ドールやフェアリイがいる世界を、印象的なシークエンスを用意し、ガジェットを連発・連鎖させて紡いでゆく作品。その奔流に呑まれるような読み方が一番楽しいのではないかと思う。イレーナあんた結局何がやりたかったんだ、という突っ込みはきっと不可だし野暮なのである。じっくりと腰を落ち着けて、登場人物の精神を骨の髄まで味わってやる、という意気込みを持った読書スタンスでは、恐らくこの魅力はわかるまい。あまり構成的な作品ではないが、代わりに、場面場面のインパクトは強いと思う。ラストも非常に美しい。
というわけで、個人的には非常に楽しんだ。『4000億の星の群れ』がダメだった人もOK、という噂は嘘ではなかった。テクノゴシックの傑作。こういうのが好きな人は必読です。