不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

11の物語/パトリシア・ハイスミス

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 ハイスミス初読み。不安感*1を中心に据えた珠品揃い。評判どおり、色々な《いやぁ〜な感じ》が味わえる。最初の「かたつむり観察者」こそ光景がショッキングで凄く目立っている。しかしこの短編を含め、所収短編はいずれも、最初のうち《影》の要素はひっそりと紛れ込んできている。そのまましこりを残して終わるか、等比級数的曲線を描いて炸裂するかの違いはあれ、じわじわ感溢れる作品揃いではあると思う。そして、いずれもジャンル固有の形式からは結構自由。なるほど大変独特だと思わされた。他の作品も読んでみたい。
 とはいえ、何となく複数作品を一気読みする作家じゃないように思われるので、一冊一冊、じっくり読んでいこうか。でも、そんなことやってると品薄(古本屋含む)になって読めなくなってしまうのかね……。悩ましいところだ。

*1:登場人物よりも、読者に対し不安感を与える感じ。