不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

いつ死んだのか/シリル・ヘアー

いつ死んだのか (論創海外ミステリ)

いつ死んだのか (論創海外ミステリ)

 ペティグルーは弁護士を引退し、妻と共に故郷エクスムーアへ帰ってきた。彼は、少年時代に死体を見たのと同じ場所で死体を発見する。しかし、人を呼んで戻ってきたとき、死体は消えていた。一方、当地の大地主は病を得、死にかけていた……。
 マイケル・ギルバートへ捧げられた、著者の遺作。引退したペティグルーが同じく引退したマレット警部と共演する。しかしまあこれはどうでも良い。主眼は、ペディグルーの郷愁と老いであり、非常にノスタルジックなセピア色の情感が醸し出される。若妻の方も、昔の友人と会って、すっかり俗な主婦と化した友人を見て時の流れを感じるなど、色々と懐古的である。ミステリ的な仕掛けも含め、『法の悲劇』等には及ばないが、このだる〜い雰囲気は気に入った。黄金期の巨匠の一人を、じっくり味わいたい人向け。