不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

タイトロープ・マン/デズモンド・バグリイ

タイトロープ・マン (ハヤカワ文庫 NV (371))

タイトロープ・マン (ハヤカワ文庫 NV (371))

 妻(10歳年下だったらしいよ!)に先立たれ酒に溺れていたジャイルズ・デニスンが、ある朝目覚めると、メイリック博士なる別人になってオスロにいることに気付いた。顔も変わっている。その後彼は、奇妙な一団に接触を図られるのであった……。
 自分が違う人間になっていて戸惑う様はまさに《奇妙な味》であり、バグリイがこのような抽斗を持っていたことに驚く。とはいえ話が進むと、違う顔面のまま冒険&謀略の世界に突入するのが愉快だ。現役を引退しているようなバカでかい銃を利用して頑張るのも嬉しい。プロットも錯綜し、終わってみれば完成度も低くない。たいへん素晴らしい。こういうごった煮小説、実は好きなんですよ。というわけで、バグリイを六冊しか読んでいない足許の状況では、個人的に一番のお気に入りかな。