不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

悪女パズル/パトリック・クェンティン

悪女パズル (扶桑社ミステリー)

悪女パズル (扶桑社ミステリー)

 大富豪ロレーヌの邸宅に招待されたダルース夫妻。時を同じくして招待されていた他の三名の客はいずれも、離婚間近の婦人であったが、ロレーヌは各々の夫をも勝手に招くという要らんことをする。かくして邸宅には三組の仲悪い夫婦が居つくという雰囲気最悪な状況となり、ミステリでこの状況となった場合、殺人が起きないことなどあるわけがないのであった。
 愛憎渦巻く雰囲気はなかなか印象的であり、一人死んでからはサスペンスフルで一気に読ませる。人間関係を主軸に色々と仕掛けてくるタイプの作品だが、構成もよく考えられており、完成度は高い。読みやすいしネタが単純というわけでもないので、幅広い層に遠慮なく「小粋な作品」としてお薦めできる。ラストの某登場人物の言動が、作品の締めとして非常に洒落ていると思われた。