不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

北ドイツ放送交響楽団

  1. ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77
  2. R.シュトラウス交響詩ドン・ファン》Op.20
  3. R.シュトラウス:歌劇《薔薇の騎士》組曲
  4. (アンコール)ブラームスハンガリー舞曲第6番(たぶんシュメリング編)
  5. (アンコール)スメタナ:歌劇《売られた花嫁》より《道化師の踊り》
  • 庄司沙矢香(ヴァイオリン)
  • アラン・ギルバート(指揮)

 庄司沙矢香を聴くのは3回目だが、今日が一番良かった。バックは重過ぎず軽過ぎず、和み過ぎず鋭過ぎずとなかなかのバランスで磐石な伴奏。その上に、庄司沙矢香の集中力の強いそれでいて温かい音が乗る。線の細いキツイ表情が前二回は印象的だったが、今回はそれほどではなく、なかなか曲趣に合った表現がなされていたと思う。アンコールはしませんのゼスチャーがあって前半は終了。今日の長い拍手はアンコール求めてのことではなく、単に演奏が良かったからだと思ったので、そのゼスチャーは要らんのではないかと思うが、野太い気色悪い声で「ブラボー!」と叫ばれる身になって考えれば、客の前からは早く姿消したいことでしょうなあ。
 後半のシュトラウスは、金管中心に若干のミスはあったものの、もちろんNHK交響楽団などとは全くレベルの異なる素晴らしいアンサンブルを聴かせた。これみよがしの効果はまったく狙わず、非常に健やかな演奏。《薔薇の騎士》の弦なんてとても美しかった。聴後感も、うっとり成分を含みつつも、晴朗なものであった。
 というわけで、この後にハンガリー舞曲はいかがなものかと思ったが、アンコールといえども羽目を変に外さないのは、ギルバートの特徴といったところか。ただ、どうせやるならヤンソンスエッシェンバッハみたいに突っ走ってくれと思わなかったわけではない。
 付言すると、なぜ首席客演指揮者と来日するのか。ダメだと言いたいわけではないが、次は首席のドホナーニと一緒に来て欲しいなあ……。