死者の靴/H・C・ベイリー
- 作者: H.C.ベイリー,H.C. Bailey,藤村裕美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/08
- メディア: 文庫
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『死者の靴』は長編だが、『フォーチュン氏の事件簿』と同じく、味のある倫理が作品を締めている。またクランクの助手であるホプリーがキャルベイに夫婦で移り住み、地域社会に溶け込みながらじっくり事件を捜査し、また、事件の解決まで一年近く時間が経過するなど、悠揚迫らぬ歩みで事件周辺の人間模様を描出する。
確かに作風は古いかも知れない。スピーディーな筋運びを《新しい》とするならば。しかしこのゆったりとしたテンポにより、田舎の空気と美醜入り混じる人間ドラマがじっくり描かれるのは、読んでいて心地よい。構成もまとまっているので、黄金期大好きな方はどうぞ。