不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

人でなしの恋/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣 (光文社文庫)

 周囲の進めるままに結婚したはいいが、どうも夫は夜な夜な蔵に入っては誰かと逢引をしているらしい……。
 有名な一編。私がどうこう言うまでもない。あり得べきでない恋を描く、名作である。もちろん何度目かの再読なわけだが、今回改めて思ったのは、未亡人の述懐というスタイルが、独特の味をもたらしていること。三人称で冷徹に描出したら、それはそれでまた違った話になったはずで、小説の書き方というのは重要な要素だなあと思った。