不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

悪人志願/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第24巻 悪人志願 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第24巻 悪人志願 (光文社文庫)

 正直、乱歩のエッセイ類はつまらん。読んでいて苦痛。語り口も柔らか過ぎ、まとまりを欠くときがある。たとえばギリシャ関係の文献紹介など、文章がひどく散漫であり、眠くなってくる。題材の選び方も私の肌に合わない。だから平井家の来歴なんぞ興味ないんだってば。あと、何度も同じネタ使いまわしているので、全集で読み進めてゆくと「その話は前にも聞いた」というのが頻出。学生時代のプラトニックなボーイズラブ話さえ使い回すわけで、他は推して知るべし。
 というわけで『悪人志願』で光るのは、小酒井不木との合作「ラムール」と、ヒチコックとの邂逅譚であろう。いずれも、乱歩のエッセイの手腕とは無関係なところで光っているわけだ。前者に至っては創作だし。
 最後に、個人的に最も衝撃的だった部分を紹介する。私がどう思ったかは敢えて書きません。それでは。

今年の初め横溝君に頼まれてエレリイ・クイーンを試読したが、半分でいやになって、結論に飛んでしまった。その時の気分にもよるのであろうが、クイーンの文章はどうも私にしっくりしなかった。やっぱりヴァン・ダインには及ばない様に思う。