不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ブルースカイ/桜庭一樹

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)

 三部構成の物語。第一部は魔女狩り華やかりし頃のドイツ(ケルン選帝侯領)、第二部は近未来のシンガポール、そして第三部は現代の日本を舞台にしている。第一部は「もっと陰鬱にできるし、やっても良かったんじゃないの?」「三十年戦争は?」、第二部は「この設定で、なぜ酩酊感(サイバーパンク風の)出さないの?」といった辺りが不満。反面、いつもの調子が全開となる第三部は筆が弾んでおり、読んでいて楽しい。ラストに必殺技を持ってきた辺りは非常にうまいと思う。
 というわけで、《桜庭一樹少女小説以外の手数が何かあるのか?》を現時点で考えるうえで、非常に有用なテキストと言えるだろう。もっとも、私が致命的な誤読をおこなっている可能性もある。そもそも、うっすらと裏設定が見えるような気がするのは……単に私の妄想とばかりは言い切れないような。
 しかしとりあえず、明示された範囲内だと、SFとしてはそれほど強くない。《少女》というテーマのためにSFを利用した観もあるので、桜庭ファンには文句なしにお薦めできるが、生粋のSFファンの反応を聞いてみたい。