不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

啓示空間/アレステア・レナルズ

啓示空間 (ハヤカワ文庫SF)

啓示空間 (ハヤカワ文庫SF)

 1,000ページを超える大作。とにかく分厚い。これで内容が濃ければ凄いことだと思うが、残念ながら味付けは薄い。誤解しないでほしいが、根幹は大変素晴らしいハードSFで、スケールも大きい。また、光速を超えることができない恒星間文明をリアルに描くその手さばきは、凡百の作家に真似できることではないと思う。ストーリーテリングも達者だし、文章も読みやすい。基本的には好印象である。
 しかし、だからこそ思うのだ。こんなにスッキリした話なのに、なんでこんなに長いのかと。逆に言うと、この読みやすさは、各種の構成要素を希釈して達成されている。『ディアスポラ』のすぐ後だから余計にそう思うのだろうが、読者を振り捨ててでも《核心》に鋭く切り込み、突き進む方が好みなんですよねえ……。少々親切過ぎかもしれない。