不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

  1. シューベルト:《ロザムンデ(魔法の竪琴)》序曲D.644
  2. シューベルト交響曲第7番ロ短調D.759《未完成》
  3. シューベルト交響曲第8番ハ長調D.944《ザ・グレート》
  4. (アンコール)シューベルト:劇音楽《ロザムンデ》D.797より間奏曲第1番

 序曲の最初の方こそ、ちょっと気乗り薄かなと思われたが、主部の最初のクライマックスが凪いだ辺りからグングン引き込まれた。造形も音色もキリリと締まっていて、でも凛としたサウンドから何ともいえない香気・色気が立ち昇る。いやあやっぱり素晴らしいオーケストラだなあと思う。ツンと澄ましている気がしないでもないが、そのツンとした様子までが様になるのが、NHK交響楽団との最大にして決定的(N響にとっては致命的)な差かもしれない。
 そして《未完成》。世紀末的な退廃を強調する演奏もありだとは思うが、ムーティ指揮のウィーン・フィルはあくまでしっかり・かっちりを基本に、健康的な美を目指す。それでもふと暗い情緒が醸されるのが、シューベルトの天才たる所以ということか。堪能。《ザ・グレート》も同傾向の演奏で、リズムもよく弾み非常に楽しめた。アンコールも大変綺麗でした。重ねて言うが、やはりこのオケは素晴らしい。とてもね。
 過度のドーパミン放出を強いられることもなく(逆に言うと、感動を求めて行ったら肩透かしを食らったのではないか)、とても心地よく満足して家路につくことができた。感謝申し上げたい。