不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

そして今はだれも/青井夏海

そして今はだれも

そして今はだれも

 実はこの作者初読。
 学園もの、青春もの……ではあるのだが、主人公は教師。新人の若い女性とはいえ、高校生たちとは視点が異なるのは当然だ。彼女の興味の焦点はどうしても学園の運営サイド、教師・父母・OGの世界に行きがちである。もちろん彼女の行動には「子供たちのため」という動機付けが為されており、プロットの要請上もこのポジションに主人公を据えるのは極めて合理的だ。また、高校生たちも、青春と言われれば青春な、ほろ苦い人間ドラマを展開してくれる。しかし、作品全体では学園ものと言われてイメージされる青春群像ばかりではないのも確か。ここにこそ、本作第一の特徴があるのではないか。
 というわけで、なかなか楽しめた一品であった。