少女には向かない職業/桜庭一樹
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/09/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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一方、ミステリとしての特徴は一転して弱い。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』同様、過去の作品が余韻/残り香としてわずかに漂う程度だ。しかし私はこれはこれで全く問題ないと思う。なぜなら、ミステリの保守本流にガチで挑むことなど、作者は最初から企図していないからだ。ミステリ的な意匠、つまり、殺人というある意味最も先鋭化された他者への干渉を通し、少女の葛藤を描き出すことこそ、桜庭一樹の目的であり、本作最大の魅力なのである。
というわけで、稀有な才能がまた一つ良い仕事をしたことを、単純に喜んでおきたい。