不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

汝らその総ての悪を/倉阪鬼一郎

汝らその総ての悪を

汝らその総ての悪を

 少年と少女がダークサイドへ傾斜してゆく様(まあ最初から闇に蝕まれてはいるのだが)を、どこかよそよそしい筆致で描く一作。印象的なシークエンスを時系列に沿って淡々と並べた印象が強く、ストーリー展開も非常にストレート(ほぼ一本道)なので、作者にプロットで勝負する気はなさそうだ。読みどころは恐らく感覚的な部分であり、狂気を冷たく、しかし美しく描いているのは単純に感心した。
 とはいえ、もうちょっと切り詰めた方が良かったと思う。ファンにはお薦め。