蜘蛛の巣のなかへ/トマス・H・クック
- 作者: トマス・H・クック,村松潔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/09/02
- メディア: 文庫
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物語も文章も、まさにクックならでは、落ち着いた足取りと沈痛な面持ちで進行する。中心に据えられる、ロイによる父親探求と明示されない和解が実に素晴らしい。たとえそれが父の最期の数ヶ月になってやっと為されたことであっても、父子は自分たちが父子であることに満足し、看取り看取られたのではないか。また、追憶と諦念の物語であるかに見せかけつつ、登場人物が《現在》を持っているという当たり前のことも力強く印象付けるのだ。終盤では絶妙なまでの光明が見られ、読後感は爽やかでさえある。とても気に入りました。