不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

GOSICKⅢ/桜庭一樹

 ヴィクトリカは風邪で伏せり、一弥は一人で王国の首都へ買い物に……。
 続編期待欲は意外とさほど煽られないが、この作品がシリーズ中の一作であることを否応なしに意識させるエピソードが頻出。勿体ないとか禁止とかではなく、単体で読まれることを最初から想定していない書きっぷりである。
 事件内容は、単純だが大掛かり。しかしキャラの動きに目を取られるため、犯罪の影は薄くなっているような気もする。多分わざとだろうし、ガチガチの本格しか認めない変態以外に対してはこれで構わないと思う。前作までと比べると印象の強さが若干落ちるのは、そんなことよりもむしろ、一弥とヴィクトリカがリアルタイムで交流を深めず、また物語が一向に暗くならない(影もほとんど差さない)のが大きい。特に後者は、既読の範囲内では桜庭一樹の特徴と思われるだけに、少々意外であった。でも嫌いじゃないですよ。