不壊の槍は折られましたが、何か?

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世界短編傑作集1/江戸川乱歩編

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

 未読でした。
 第一巻は1860〜1906年の作品を収めており、いずれもなかなかの出来栄えを誇る。さすがに面白い作品ばかりですね。個人的には皮肉や風刺が効き、ユーモアと同時に作者の邪悪な意思が鮮明であるコリンズ「人を呪わば」、チェホフ「安全マッチ」、ロバート・バー「放心家組合」辺りがお気に入り。特に「放心家組合」における登場人物間の、なんとも間が抜けていて素晴らしく奇妙な掛け合いが素晴らしい。とある有名トリックが使われるモリスン「レントン館盗難事件」、今では恐らく無理なフットレル「十三号独房の問題」は、さすがにちと古いものの黎明期特有の芝居気・興趣はたっぷり。アンナ・カサリン・グリーン「医師とその妻と時計」は物悲しい風情が印象的。オルツィ「ダブリン事件」だが、隅の老人は前からあんまり好きじゃない。
 まあこんな感じです。