結論から言えば、『実験小説 ぬ』は非常な傑作短編集
*1である。実験小説と名打つだけあって、基本的にはア
イデア勝負なのだが、そのア
イデア(=何を小説の材料とするか)とそこに対する肉付けが最高なのである。奇抜なア
イデアを、ナンセンス/奇妙/ブラックにまとめあげており、しかも常にどこかユーモラスなので大変親しみやすい。文体の使い分けも、このように一冊にまとめると上手さが際立つ。そして特筆大書べきは、いずれの短編も同格の高みに達していることだ。エンタメ読者ではなく、純文読みの方がより正当に評価できるような気がしないでもないが、とにかく読んどけ、という一冊ではある。