不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

震度0/横山秀夫

震度0

震度0

 『ルパンの消息』で欲求不満に陥ったので、今の横山の実力を読みたいということで購入。
 N県警の、幹部失踪により噴出する緊迫した内部事情は、彼にしか書き得ないものである。また、視点人物だけでも相当な数にのぼるのだが、最終的には個性をそれぞれ確立させる。ここら辺は相変わらずうまい。しかし今回はその道行きがどうも求心力に欠け、印象散漫なのである。捜査も人間ドラマもだらだら流れる部分が多過ぎ、テンションも終始低い。作者が何をやりたかったか(=作品のテーマ)も、最後までよくわからない。もうちょっと締まった作品にできたと思うんだけどなあ。長編だからか? しかし『クライマーズハイ』では印象的なシーンが続出したのだし……。うーん、横山秀夫はそもそもが親爺臭いので好みではないんだが、それとは別の次元で、単純にお疲れなんでは?