不壊の槍は折られましたが、何か?

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超人ニコラ/江戸川乱歩

江戸川乱歩全集 第23巻 怪人と少年探偵 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第23巻 怪人と少年探偵 (光文社文庫)

 江戸川乱歩は『二銭銅貨』でデビューし、『超人ニコラ』を小説の絶筆として死ぬ。『超人ニコラ』の出来栄えは末期の衰えとしか言いようがないものであり、言い知れぬ哀しみを感じる。過去作の流用は良いとしても、よりにもよって二十面相にこの手段を使わせますか。それを自分でやるのが二十面相のアイデンティティ/レゾンデートルではなかったのか。という感想を太古の昔、初読時に抱いたわけだが、これは今も変わらない。しかし泣いても笑っても、この作品は乱歩の最後の作品なのである。静かに看取ってやろうではないか。特に少年探偵団をもってこの世界を知ってしまった人間は。