不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

サウスバウンド/奥田英朗

サウス・バウンド

サウス・バウンド

 元過激派の両親を持った少年の、日常の悲喜こもごもと、いきなりの都落ちを描いた長編。文章も物語もすいすいとコミカルに流れるので読みやすく、登場人物もほとんど全員キャラが立っている。波瀾も過不足なし。極めて良質な少年視点の物語と言えるだろう*1
 というわけで、いかにも過激派という言動を繰り返す父親をどう捉えるかが問題。前半の舞台である中野に比べ、沖縄の田舎ではこの手の発言がさほどエキセントリックに見えないのは興味深い。

*1:少年少女向けと言っているわけではない。念のため。