不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

死神の精度/伊坂幸太郎

死神の精度

死神の精度

 死神を一人称の主人公とした連作短編集。人外の存在に視点を据えたため、いつもの異様なまでに飄々とした語り口や特殊な視座も全く気にならない。それどころか、《主人公が人間ではない》ことについて読者を納得させる力を生み出している。なるほど主人公は人間としては感性が特殊、だから彼が人間ではないことは明らか、という感じなのだ。伊坂の文章は人外向きだったのか。設定の勝利。
 各編もそれぞれに、夕映え、最期の予感、そういったものを終始漂わせており、《人生のまとめに入ってるな》感がもう非常にズルイ。連作であることもうまく利用しているし、実に鮮やかな手並みである。今までの伊坂作品の中では一番気に入った。装丁も素晴らしい。広くお薦めの一冊。