不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

愚か者の祈り/ヒラリー・ウォー

愚か者の祈り (創元推理文庫)

愚か者の祈り (創元推理文庫)

 先月出た某ハードカバーがあまりにも糞なので読書ペースが異様に鈍化している。最早ここでボロクソに書くしか怒りの持って行き場がない感じ。今年のワーストワンはほぼ間違いなかろう。
 というわけで、珍しく一冊の通読を中断し、ある程度の品質が保証されるに違いない『愚か者の祈り』に手を付ける。期待は裏切られず。
 老獪で頑固な警部と、まだまだ青い(でも閃きで捜査のターニングポイントを演出する)刑事による、それほど大きくない街での殺人事件捜査。いつも通りの作風といえるだろう。警部が罵詈雑言を喚き散らすタイプなので、作品全体の印象は不思議と地味ではないが、骨子はやはり堅実にして沈着。新味はほとんどなきに等しいが、それでもやはり、被害者の人生模様が捜査の進展に同期化して、徐々に立ち現れる様は良い。私は好きです、こういうの。