不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

わが夢と真実/江戸川乱歩

 乱歩の自伝といった様相を呈する『わが夢と真実』はそこそこ興味深く読んだ。平井家のルーツまで割と書き込んでいるのは乱歩らしくて良い。同性愛に関するよしなしごとも色々書かれており、乱歩の猟奇の虫が実生活にどう影響したかを垣間見るのは楽しい。もっとも、こんなの書いている暇があるなら小説書けよ、無理なら作家なんかやめちまえ*1、と思わないでもない。
 『海外探偵小説作家と作品』は、今となっては全然使えない。あと、ポケミスで多くの作家を網羅的に紹介せんとする気概は良いのだが、本格以外だと《私は紹介者として適役じゃないから、向こうで評判いいの並べておくよ》というスタンスで結果的にバランスがとれているのに対し、本格の場合は、鑑識眼の自信が強過ぎるのだろう、無自覚に趣味と自己主張に走っておりバランスがおかしい。しつこいようだが『赤毛のレドメイン家』をオールタイムベスト1に推す読者に信頼を寄せるのは、私には無理な相談である。
 というわけで、分厚い分ちょっと厳しかった。以上。

*1:特に戦後