誰のための綾織/飛鳥部勝則
- 作者: 飛鳥部勝則
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2005/05
- メディア: 単行本
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実際読んでみると、内容もやる気十分、完成度も高く、現時点でのマスターピースに指定して構わないと思う。もちろん相変わらず、作品の雰囲気は《文学的な香気漂う》と表現されるようなものではなく、恐らく作者が意図しない/したくないにも拘らず、卑俗で妙に安っぽい。おどろおどろしい/爛れた雰囲気が今一昇華されきっていないのだ。《こんな女子高生いない》云々よりも、絵画と同じでもっと根本的な問題ではないか。この作家とその作品は、受け手にしてみれば専ら良い意味でB級だと思うのだが、作家本人が目指している/書きたい/描きたい地点はここではないような。私の気のせいかな。いや、この作家好きなんですよ。
ミステリ的な仕掛けだが、なかなか面白い。それ自体だと、もちろん今回が初出というものではないが、ミステリの理念的な部分が語られるプロローグ・エピローグと組み合わせることで、なかなか忘れがたい味わいを残す。大半を占める《蛭女》パートも、主人公が悶々としているのと相俟って雰囲気たっぷり。飛鳥部勝則ってどんな作家? と問われた時に、『殉教カテリナ車輪』と共に差し出すのが良いのではないか。
(05年10月31日追記)盗作により、出荷停止となりました。うわ……。