不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

誰のための綾織/飛鳥部勝則

誰のための綾織 (ミステリー・リーグ)

誰のための綾織 (ミステリー・リーグ)

 久々に作家本人による絵画が復活。しかも、孤島に女子高生と女性教師を拉致! ……飛鳥部さん本気だと思わざるを得ない。
 実際読んでみると、内容もやる気十分、完成度も高く、現時点でのマスターピースに指定して構わないと思う。もちろん相変わらず、作品の雰囲気は《文学的な香気漂う》と表現されるようなものではなく、恐らく作者が意図しない/したくないにも拘らず、卑俗で妙に安っぽい。おどろおどろしい/爛れた雰囲気が今一昇華されきっていないのだ。《こんな女子高生いない》云々よりも、絵画と同じでもっと根本的な問題ではないか。この作家とその作品は、受け手にしてみれば専ら良い意味でB級だと思うのだが、作家本人が目指している/書きたい/描きたい地点はここではないような。私の気のせいかな。いや、この作家好きなんですよ。
 ミステリ的な仕掛けだが、なかなか面白い。それ自体だと、もちろん今回が初出というものではないが、ミステリの理念的な部分が語られるプロローグ・エピローグと組み合わせることで、なかなか忘れがたい味わいを残す。大半を占める《蛭女》パートも、主人公が悶々としているのと相俟って雰囲気たっぷり。飛鳥部勝則ってどんな作家? と問われた時に、『殉教カテリナ車輪』と共に差し出すのが良いのではないか。

(05年10月31日追記)盗作により、出荷停止となりました。うわ……。