不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

興奮/ディック・フランシス

興奮 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-1))

興奮 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12-1))

 この歳になって、フランシス初体験。
 ……すいません、滅茶苦茶面白いです。主人公ダニエル・ロークが実にクール。そこそこに幸福で安全な人生から、スリルに溢れた危険な裏の仕事に踏み込んでゆく。しかしそれは、馬のプロという誇りと気概に裏打ちされている。プロットや文章も無駄が省かれており、陰謀の全貌とダニエルの活動を、簡潔に、一切の過不足なく、描出してゆく。
 一言で言って「粋」な小説。訳文の力も恐らく大きい。お薦め。