三百年の謎匣/芦辺拓
- 作者: 芦辺拓
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/04/21
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
ただし、『紅楼夢の殺人』と異なり、物語としての色調は統一的なものではない。タイトルどおり、各編の時代は三百年をまたがるし、場所もバラバラ、登場人物も多士済々である。このバラエティーに富んだ配置に対してどう思うのかがまずはポイント。福井健太も言及しているが、《謎解きをラストだけに集める》ことによる、各編のその時々における締まりのなさも、個人的には気になった。『紅楼夢の殺人』ではあまり気にならなかったんだけどなあ……。
芦辺拓の筆自体は乗っているため、私としては読んでいて普通に楽しめたし、最後に立ち現れる主要主題も、これはこれで話を綺麗にまとめている。前段落の私見によるマイナス点にもかかわらず、本心から名手の佳作と思うし、本格好きにはお薦めできるかもしれない。